“アミンチュ”ボンネットバス奮闘記~幻影・若江線巡礼(前篇)

後藤奇壹の湖國浪漫風土記」に、ようこそおいでくださいました<(_ _)>

昨年末に特集でお届け致しました“アミンチュ”ボンネットバスが令和に辿った数奇な運命の物語(その道のりは以下のリンクの記事から是非ご一読ください)。

>>>甦れ!“アミンチュ”ボンネットバス顚末記~邂逅篇

無事再生作業を終えた後、微調整を重ねながら、昨年9月20日の公試運転、10月3日と12月6日の公式復活運行と元気に湖國の道を駆け抜けています。

かねてより所有者である二輪工房代表の村田さんには、「かつての江若(こうじゃく)鉄道が成し得なかった夢の道を走行する機会があれば是非同乗取材させてください」とお願いしておりました。ただもともとBXD30は路線バスとして使用されることを前提に製作されたモデルであるため、これを実現させるには半世紀以上近距離運行に供してきた老体が、守山から片道約80kmの長距離運行に耐え得ることが大前提となります。然も行程の約1/3は勾配約11‰の山岳路。恐らく江若交通堅田営業所配置時代にも経験のない運行ですから、実現のハードルは非常に高いのではと推察しておりました。

RMライブラリー『江若鉄道(上)(下)』【ネコ・パブリッシング刊】

かつてこのBXD30が所属していた江若交通の前身である“江若鉄道”が成し得なかった夢の道とは・・・今年に入りネコ・パブリッシングよりRMライブラリーシリーズで『江若鉄道 (上) (下)』が刊行されました。今は亡き江若鉄道について豊富な情報と写真で詳細に解説しています(残念ながらバスに関する記載はございません)ので、是非ご覧になってください。

2021(令和3)年2月16日。村田さんから1通のメールが届きました。文面には『今津小浜線(熊川宿経由)運行に向けたロケーションハンティングを明日行う』旨が書かれていました。折しも翌17日は滋賀県湖西地方並びに福井県嶺南地方は生憎の雪予報。運行実現が一歩前進した喜びと、何やら前途に暗雲を感じさせる予感に複雑な心境を覚えました(後日、村田さんより無事ロケハンを終えたとのお知らせを戴き安堵しました)。

BXD30のある風景 JR守山駅東口ロータリー

新型コロナウイルスの感染状況が全国的にやや膠着状態となっていた2021(令和3)年3月28日午前9時。行先方向幕に「守山駅」行きを掲出したBXD30が、JR守山駅東口ロータリーに颯爽と現れました。

今年の3月は何故か週末に限って“雨”という特異な周期の天候が続いていました。せめて最終日曜日だけは・・・との願いも虚しく、ご多分に漏れず朝から雨に見舞われました。

BXD30のある風景 近江鉄道バスとの邂逅

JR守山駅は、現在でも江若交通がJR堅田駅間で「びわこ横断エコバス(84系統琵琶湖大橋線)」を乗り入れている拠点。昨今交流を深めている江若バスの運転手の方々には特に違和感は感じておられないようでしたが、共にJR守山駅に乗り入れている近江鉄道バスの運転手の方々の眼には「様々な意味で」奇異に映ったように感じました。

BXD30にとってかつての古巣の後輩との出逢いはどのような心境でしたでしょうか。

さてこの地より『江若鉄道悲願の若狭へ』と称し、復活運行第3弾・史上初の公式滋賀越境&連続長距離運行を果たすべく、一路福井県小浜市を目指します。

JR守山駅を出発し、84系統琵琶湖大橋線同様国道477号を西進。琵琶湖大橋を渡り、琵琶湖大橋交差点から県道558号(旧国道161号)に入り、かつての江若鉄道線にほぼ並行してひたすら北上します。

心なしか北上するにつれ、徐々に雨脚も弱まってきました。

BXD30のある風景 道の駅 藤樹の里あどがわ

途中、道の駅 藤樹の里あどがわにて運転停車(トイレ休憩)。当日ここではイベントが行われていたためか、突然出現したノスタルジックバスに、ギャラリーが集まり出しました。例年よりも随分と早かった桜の開花も、復活運転に花を添えてくれています。

行先方向幕は「今津駅」行きを掲出しています。

因みにここ安曇川(あどがわ)は、江若鉄道が延伸を果たせなかった福井への道程をバスで補完した路線の起点となった地です。かつては近江今津駅発着の国鉄バス(現・西日本ジェイアールバス)との共同運行で、江若バスは当時同じ京阪グループであった若狭フィッシャーマンズ・ワーフとの間を結んでいましたが、惜しまれつつ1997(平成9)年3月8日に廃止。現在は西日本ジェイアールバスが、JR近江今津駅とJR小浜駅間を単独で運行しています。

BXD30のある風景 江若鉄道 旧近江今津駅

午前10時30分、かつて江若鉄道の終着点であった旧近江今津駅に到着。廃線後、駅跡地は今津町農業協同組合(後にJA今津町、令和3年4月1日付でJAレーク滋賀に合併)の所有となります。プラットホームを含む駅構内は県道291号と農協関連施設、後に一部がくみあいマーケット(現・Aコープ)今津店の店舗及び駐車場に。駅舎は農協旅行センターに転用されましたが、その後温浴施設、テナントの食堂、スーパーマーケット建設時の現場事務所と用途を変え、最終的には倉庫として使用されていました。

その後は老朽化に伴い幾度となく解体の話題が持ち上がっていました。今回約20年振りに再会を果たしたのですが、これが“虫の知らせ”と申しましょうか、この時点で駅舎の運命は既に決していたようです。

JA今津町はJAレーク滋賀に合併する直前の3月に行われた江若鉄道近江今津駅舎保存活用協議会との協議で、駅舎の売却条件や土地の賃料について合意に至らず交渉は決裂。大型連休明けの5月6日より解体作業が開始され、5月中旬には工事が完了することが決定しました。

1930(昭和5)年12月に竣工し、鉄道廃止後も約90年もの間、湖西地方の歴史を見守ってきた旧近江今津駅舎。かつての江若鉄道のよすがを伝える唯一無二の鉄道遺産であり、当時の地方鉄道としては珍しい三角屋根を擁する洋風デザインは、再整備次第では国指定登録有形文化財の対象となる価値も見出せただけに、ただただ残念至極と言わざるを得ません。

BXD30のある風景 旧近江今津駅をあとにいざ小浜へ

旧近江今津駅舎最期の雄姿に別れを惜しみつつ、BXD30は行先方向幕を「小浜駅」行きに変換し、江若鉄道果ての地を後にしました。

いよいよここから江若鉄道が成し得なかった夢の道。1922(大正11)年公布の改正鉄道敷設法別表第77号に記載された「京都府山科ヨリ滋賀県浜大津、高城ヲ経テ三宅ニ至ル鉄道」で未成の区間を辿る道。全長約20km、勾配約11‰の山岳路。BXD30は越境して小浜へと続く九里半街道(九里半越)走破に挑みます。

 【後篇へ続く】

「後藤奇壹の湖國浪漫風土記」ブログ全表示はこちら!

にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 滋賀県情報へ

ご愛読いただき誠に有難うございます。ワンクリック応援にご協力をお願いいたします!


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。