「後藤奇壹の湖國浪漫風土記」に、ようこそおいでくださいました<(_ _)>
引き続き、「多可龍王との出逢いから拾年」をお届け致します。
今から10年前。当時、龍神様の奉祀に滅法執心の知人がおりました。その知人は小生が信心深い人間であると知るや否や、会う度に矢鱈と龍神信仰の話題をしておりました。
龍神奉祀の難しさは小生も少なからず存知しておりましたので、話半分に聞いておりましたが・・・
或る日、自宅の庭木の剪定をしておりましたら、とても大きく、欠損の全く無い完全な姿で、然も眼が七色に輝くアオダイショウの抜け殻を見付けました。ここに居住して30年、このような経験は全くありませんでしたので、大切に陰干しして保管しました。

後日例の知人にこの出来事を話しましたら、早速或る人に引き合わせたいというのです。些か眉をひそめつつも、次の休みに予定を調整することに致しました。
そしてその当日。知人に誘われたのは、何の変哲もないとある古い民家。そこにはお独りの高齢の女性がお住まいになられていました。知人曰く、その方は龍神様と人を引き合わせるコーディネーター。所謂、青森・恐山のイタコのような存在の方であるというのです。
信仰心の厚い小生ですが、どうもこういう場には眉を顰めてしまいます。恐る恐る中にお邪魔しました。家の中はとても薄暗いのですが、奥に参ると煌々と蝋燭の火が灯る一角がありました。そこにはとても大きな神棚が祀られ、その周囲には溢れんばかりの神饌が並べられていました。
早速知人はその高齢女性に、小生が体験した顛末を話すよう促しました。そして女性からは紙に氏名と住所、生年月日を元号で書くようにと言われました。それらを終えると、女性は神棚に向かい祝詞を唱え始めました。
暫くして女性の唱える祝詞が突然プツリと途絶え、急に立ち上がって部屋の奥へと消えていきました。その状況に小生も知人も呆気にとられていたのですが、程無くして女性は白装束を纏って戻り(この展開にも正直驚きましたが・・・)、再び祝詞を唱え始めました。
そして一連の祭祀が終わり、このようなやり取りとなりました。
知人「どうしていきなり白装束に着替えられたのですか?」
女性「この龍神さんはとても格式高い神さんや」
知人「どこの龍神さんですか?」
女性「タカ・・・タカ?・・・何処の神さんや?」
小生「タカというのは、多賀の古い地名ではないですか?」
女性「・・・そうか、お多賀さんや、お多賀さんのお使いや」
知人「お多賀さん!?」

女性「えらい格の高い神さんに仕えてはるさかい正装せんとあかんのや」
小生「そんな偉い神さんがなんでウチに?」
女性「この龍神さんは、えらい喜んではる」
小生「喜んではる???」
女性「そうや、ようやっと自分の存在に気付いて貰えたと喜んではる」
小生「そうですか・・・」
女性「今迄龍神さんをお迎えしたいって言うてお願いに来る人はぎょうさんいはったけど、
気付いて貰えて嬉しいなんて言う龍神さんは初めてや」
小生「ウチの家長は父ですから、父がお祀りするということですか?」
女性「いや、龍神さんはあんたに祀って欲しいと言うてはる」
小生「私がですか?」
女性「そうや、だからあんたにお示しがあったんや。それにな・・・」
小生「それに?・・・」
【後篇へ続く】

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