【令和改元記念企画】国家恒久安寧の願い“さざれ石”の伝説

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今回はさざれ石についてのお話をいたしたいと存じます。さざれ石?・・・どこかで聞いた覚えがありますよね。

そう、日本の国歌『君が代』の一節に登場します。この時期この歌に関する論議の機会も多いのではないでしょうか。でもこのさざれ石って、実際にどのようなモノなのか?ご存知の方は少ないかもしれません(教科書にも流石に写真付きで紹介されてはいませんしね)。

さざれ石は「細石」とも表記され、小さな石の欠片(かけら)の集まりが炭酸カルシウム(CaCO3)などにより埋められ、1つの大きな石の塊に変化したもので、石灰質角礫岩(せっかいしつかくれきがん)と呼ばれます。石灰岩が雨水で溶け、石灰質の作用により小石がコンクリート状に凝結して生成されます。

う~ん、言葉では解りにくいですね。写真で見ていただいた方が早いです(笑)。こんな感じで小石が固まったようなモノです。何とこの石、伊吹山(滋賀・岐阜の県境付近)で主要に産出する非常に珍しい鉱物なのです。

さざれ石

さて、公式に『君が代』は「題しらず、読人しらず」の歌で、古今和歌集に収録されている短歌の1つとなっています。しかし小生のネタ帳にはこう記されております。

平安時代前期、文徳(もんとく)天皇の第一皇子に惟喬(これたか)親王(844~897)という人がおりました。聡明な人柄で知られ父・文徳天皇からの覚えめでたい親王は、このまま皇太子となり皇統を継いでいくことを周囲から嘱望されていました。

惟喬親王

しかし時の権力者で藤原北家全盛の礎を築いた藤原良房(ふじわらのよしふさ)が文徳天皇の女御(にょうご/側室の前身)として送り込んだ娘が懐妊し、惟仁(これひと)親王を出産。文徳天皇は良房に気兼ねして惟仁親王を皇太子とするものの、成人するまでは惟喬親王に皇位を譲ることを画策します。

しかし志半ばで崩御。良房の横やりも入り、惟仁親王は僅か生後9ヶ月で清和天皇として即位します。 その後の惟喬親王は数々の朝廷の要職を歴任するものの、皇族としては“蚊帳の外的存在”であることは否めず、後に出家し隠棲します。

惟喬親王は木地師(きじし/ろくろを用いて椀や盆などの木工品を加工・製造する職人)としての才にも秀でていたとされ、技術を伝授したという伝説は日本各地に残っています。

その最も有名な伝説の地が、東近江市君ヶ畑町です。“木地師発祥の地”とされ、現在でも木地師の伝統が受け継がれています。

木地

なおこの地には親王を祀った大皇器地祖神社(おおきみきぢそじんじゃ)や墓所、住居跡も残っています。

さて随分と長い前置きとなりましたが・・・ この惟喬親王の配下に殊原左衛門(ことはらさえもん)という、椀木地に携わる人物がおりました。左衛門は仕事柄、美濃國春日村(現在の岐阜県揖斐川町春日)と君ヶ畑、そして京都を頻繁に行き来しておりました。

ある日左衛門は旅の途中、伊吹山系の川で綺麗なさざれ石を見つけ、それを歌に詠みました。

伊吹山

わが君は 千代に八千代に さざれ石の いわをとなりて こけのむすまで

左衛門はこの歌に、見つけたさざれ石を添えて朝廷に献上しました。

後にこの歌は古今和歌集に採用され、また左衛門は歌の才を認められて、朝廷より藤原朝臣石位左衛門(ふじわらのあそんいしいさえもん)の名を授けられました。

歌詞中のさざれ石は文字通り細かい石や小石の意味で、小石が巌(いわお/岩)となって、さらにその上に苔が生えるまでの過程が、非常に長い歳月を表現するための比喩として用いられています。

そしてこの歌は一部改編され、1880(明治13)年に国歌『君が代』の原歌として採用されるのです。

君が代

『君が代』は“国歌にしては古臭い”だの“一部の政治家が(ポリシー?でもって)歌わない”だの“天皇制の讃美だ!”などと何かと論争のタネになっていますが、小生は純粋に日本という國の恒久安寧を願ったこの歌を守り続けたいな・・・と思っています。

前回の記事で「令和の世が全ての人々にとって幸福を享受できる時代であって欲しい 」と述べましたが、改元して1か月余り。凶悪な事件、目を覆いたくなるような事故、「これが日本人の所作か?」と疑いたくなるような行動・言動・行為の話題ばかりで辟易しております。

1日も早く、『令和』の名に相応しい穏やかな日々が訪れて欲しい・・・小生の願いは、皆さんと同じであると思いたいです。

このさざれ石ですが、産出地に近い岐阜県揖斐川町春日にある「さざれ石公園」を始め、意外にも多くの各地の神社に鎮座もしくは奉納されています。今回掲載した写真は多賀大社に鎮座しているものです。鉱物としてはとても興味深い造形をしておりますので、『君が代』での経緯はともかく、是非見分してみてください。

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