Monthly Archives: 4月 2018

園城寺夜話番外篇“懐かしさ溢れる菓舗 親玉商店”

「後藤奇壹の湖國浪漫風土記」に、ようこそおいでくださいました<(_ _)>

 

今回園城寺界隈を歩いてみて、どうしてもあと1つご紹介したい場所がありまして、最後の最後まで取っておきました(^^)

 

親玉商店園城寺から琵琶湖疏水を抜け馬場町遊廓跡へと進む途中に、何やら懐かしさで溢れた佇まいを醸し出している和菓子店を発見!

 

お店の名前は親玉商店京阪電鉄・石山坂本線の三井寺駅より、南へ徒歩10分(約200m)の場所にそのお店はあります。

 

店構えが昭和30年代の雰囲気を醸し出していてexcellent!最近の小洒落た(笑)イマ風の店舗に馴染めない時代遅れの小生推薦の、絶対に立ち寄るべきお店です(^^)

 

人気のない店頭にソロリソロリと近づくと、店の奥は大量の蒸気で溢れています。どうやらお祝い事用の赤飯の炊き込みを仕込んでおられたようでした。

 

親玉商店の和菓子たち(1)こちらのお店は年配のご夫婦が切り盛りされているのですが、驚くのはショーケースに掲示されたプライスタグ。

 

度重なる光熱費や原材料費の高騰。おまけに消費税の増税と取り巻く環境は決して良いとは言えないにも関わらず、商品の大半が100円台前半という経営努力振りなのです。

 

だからといって、何かケチ臭いワケがあるのかと言えばそうではありません。

 

親玉商店の和菓子たち(2)どのお菓子も魅力的な色形をしており、広い世代に受け入れられるようとても素朴な味わいを提供されています。奥さん曰く、「周囲のお店は代替りや改装をきっかけに値段を大幅に上げはった。うちは昔からのお客さんを大事にしたいし、子供が気軽に買える値段が売り。決して楽や無いけど、元気なうちは頑張りたい」とのこと。

 

こういうお店が次々と消えていく寂しい世となった昨今。願わくは1日も長く頑張って戴いて、和菓子との素敵な出逢いを提供し続けて貰えれば思う今日此頃です。

 

親玉商店

・滋賀県大津市長等3丁目6-14
【TEL】 077-522-6807

 

(園城寺夜話、おしまい)

 

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園城寺夜話(12)“残照・馬場町遊廓”

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今回の園城寺夜話は、馬場町遊廓(ばんばちょうゆうかく)についてご紹介したいと存じます。

 

馬場町遊郭(1)西日本最大級の歓楽街としてその名を欲しいままにした雄琴(おごと)が大津に位置することは今でも多くの人が知り得るところ。

 

しかし、かつて大津に国内屈指の規模を誇る遊廓(ゆうかく/公許の遊女屋を集め周囲を塀や堀などで囲った区画)が戦後間もない頃まで存在したことは以外と知られていません。

 

この地に遊廓が設けられた確たる時期は判然と致しませんが、大津宿に隣接して、江戸時代初期に現在の長等3丁目辺りに整備されたものと思われます。

 

延宝6(1678)年に藤本箕山によって著された『色道大鑑』によれば、遊廓は全国で25箇所存在し、ここはそのうちの1つとされています。

 

とはいえ「東海道の宿場町・大津に隣接しているとはいえ、何故園城寺の門前町に?」という下衆な勘繰りをせずにはいられません。

 

馬場町遊郭(2)またこの界隈は柴屋町(しばやまち)とも呼ばれ、柴屋町遊廓とも称しました。

 

その他にも大津宿周辺には、真野(長等1丁目)・四の宮(京町3丁目)・稲荷新地(松本2丁目)にも遊里は存在しました。

 

ですが、井原西鶴の『好色一代男』にも登場するこの遊廓は、当時“東の吉原、西の柴屋町”とも言われる程の格式と隆盛を誇っていたようです。

 

街の東西南北の入口に大門を設け、最盛期には廓内に約30軒の遊女屋が存在しました。

 

馬場町遊郭(3)明治以降、芸娼妓解放令の発令、内務省令娼妓取締規則の制定、そして大東亜戦争後のGHQの公娼制度廃止と様々な規制が発せられるものの、バーやスナック、料亭などと看板を変え、遊廓はほぼそのまま赤線の通称で呼ばれて存続しました。

 

 

しかし、昭和33(1958)年4月1日に施行された売春防止法。昭和46(1971)年に開業したトルコ風呂(現在のソープランド)“花影”を皮切りとする雄琴温泉の風俗街化が、この花街の衰退を決定的なものとしてしまいました。

 

流石に江戸時代の建物は残っていませんが、近世から近代へと移行した時期の花街の情景を今でも色濃く残しています。

 

かつて大津スチームバスセンターというソープランドが存在し、花街の残り香的存在として君臨していましたが、近年廃業し、現在は料理屋が建っています。

 

馬場町遊郭(4)格式高い花街として隆盛を誇った馬場町遊廓も、都市開発の波に押され、そのよすがは今や風前の灯です。

 

遊廓・遊里・花街の話題はとかく忌むべきものとして排除されがちですが、かつての日本の文化の一端としてその足跡だけでも残して欲しいと思うのは小生だけではないと思います。

 

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園城寺夜話(11)“三井の晩鐘の伝説”

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今回の園城寺夜話は、三井の晩鐘(みいのばんしょう)の伝説についてご紹介したいと存じます。

 

園城寺鐘楼金堂の南東側に一際目を引く檜皮葺の立派な鐘楼があり、ここに巨大な梵鐘が吊られています。

 

この鐘は三井の晩鐘と呼ばれ、“天下の三鐘(日本三名鐘)”の1つに数えられています。ちなみに天下の三鐘とは“姿の平等院(京都府)”“銘の神護寺(京都府)”、そして“声の三井寺”の3つ。

 

特に園城寺のこの鐘は音色の美しさに大変定評があります。昨年12月25日に放送された、テレビ東京『世界!ニッポン行きたい人応援団』でも紹介された通り、海外にも熱狂的なファンが存在し、その評価や価値観は今やワールド・ワイドなものになりつつあります。

 

またこのことは古くは近江八景の1つとして、また平成8(1996)年に環境庁(当時)が制定した日本の音風景100選にも選定されていることからも実証されています。

 

三井の晩鐘天下分け目の戦い、関ヶ原の合戦後の混迷覚めやらぬ中の慶長7(1602)年4月21日。

 

三井寺第137代長吏・道澄の発願により、弁慶の引摺鐘の後継としてこれを模して鋳造されました。

 

重量は六百貫(約2,250kg)。除夜の鐘の百八煩悩に因み、上部には乳(ち)と呼ばれる108個の突起が施されています。

 

この三井の晩鐘にはとても哀しいお話が伝わっています(文献により多少内容が異なります)。

 

昔々滋賀の里に、1人暮らしの若い漁師が住んでおりました。とある春の夕べのこと。どこからともなくやってきた美しい娘が若者と一緒に住むようになります。炊事・洗濯・掃除と本当に甲斐甲斐しく働くので、二人は祝言を上げ夫婦となりました。周囲も羨むほど夫婦仲が良く、やがて二人の間には子供が産まれます。

 

三井の晩鐘物語(1)(『三井の晩鐘』所載)ところがある日のこと。妻が「実は私は琵琶湖の龍神の化身で、神様にお願いして人間にしてもらいましたが、もう湖へ帰らねばなりません」と言って泣き出し、止める夫の言葉も振り捨てて湖に帰ってしまいました。

 

残された子どもは母親を恋しがり、毎日激しく泣き叫びます。夫は昼に近隣でもらい乳をし、夜は浜に出て妻を呼び、三日に一晩の約束で乳を飲ませていました。]

 

しかしそれも束の間、妻は龍の世界の掟が厳しくなり乳を与えることが出来なくなったと言い、これをしゃぶらせるようにと自身の右目を差し出して姿を見せなくなってしまいました。

 

母親に貰った目玉をしゃぶると子供は不思議と泣き止むのですが、舐め尽してしまうのにそう何日も掛かりません。

 

三井の晩鐘物語(2)(『三井の晩鐘』所載)そこで夫は再び浜に出て妻を呼びます。

 

すると妻は左目も差し出します。盲目となってしまった妻は方角も解らなくなってしまい、悲しい上に家族の無事な姿さえ見ることが出来なくなってしまいました。

 

そこで妻は夫に三井寺(園城寺)の鐘を撞いて、 二人が達者でいることを知らせてくれるように頼みます。 夫は毎日鐘を撞き、湖に音色を響かせて妻を安堵させたといいます。

 

このお話は園城寺に、また滋賀に纏わる民話としても非常にポピュラーな一篇として語り継がれています。

 

似たようなお話は全国に存在しますが、夫婦愛、親子愛、そして家族愛を改めて考える契機となるよいお話です。

 

『三井の晩鐘』(小学館刊)また哲学者としてそして独自の視点から日本史を紐解く『梅原日本学』の権威として高名な梅原猛(うめはらたけし)先生も、昭和56(1981)年に絵本『三井の晩鐘』(小学館)を監修されています。

 

既に絶版となって久しいですが、滋賀を始め全国の図書館の蔵書として未だ閲覧の機会はありますので、是非読んで戴きたいですね。

 

 

 

 

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