「後藤奇壹の湖國浪漫風土記」に、ようこそおいでくださいました<(_ _)>
皆様ご無沙汰致しております。息災でいらっしゃいますでしょうか。前回「超スローな更新」などと申しておりましたが、いやはやあれからもう3ヶ月余り・・・祇園祭がどうのこうのと言っていたのも束の間、秋というか冬にも手が届きそうな勢いの今日此頃でございます。
本当に久し振りに筆を執ります。乱文乱筆平にご容赦くださいませ。
さて去る9月25日。何気なくテレビのローカルニュースを視聴しておりましたら、『ひこにゃんラッピングバス、50歳超え引退へ』の一報が!それまで半眠状態で視聴していた小生は、思わずテレビに噛り付きました。

余り地元の悪口を言いたくはないのですが、明確なビジョンを示せず、おまけに何分アピールが下手くそで町興しが不発続きの彦根。
そんな故郷にあって、ひこにゃんとボンネットバスの定期運行は唯一無二の貴重な観光資源。よくもまぁあっさりと決まったものよと、驚くやら呆れるやら・・・(どうした御膝元行政は!!)。
ひこにゃんラッピングバスと呼ばれるこの昭和レトロぷんぷんのこのボンネットバス。正式にはいすゞ自動車BXD30型と称します。全長8.31m/全幅2.45m/全高2.93m/定員は46名。総重量8.5トンで6,370cc(130馬力)のディーゼルエンジンをボンネットに収納しています。
このバスは1966(昭和41)年に製造され、当時湖西エリアでの交通機関の中核として君臨していた江若(こうじゃく)交通の路線バスとして導入されました。

堅田営業所に配属され、その運転し易さから、狭隘路であった葛川・途中・和邇方面と旧滋賀郡堅田町(現・大津市堅田地区)の巡回路線を中心に活躍。
江若交通時代のナンバーは滋2い1074。4台所属していたボンネットバスの1台として沿線住民に親しまれていましたが、道路整備の促進や輸送効率の高い(定員の多い)箱型車体バスの台頭から、1981(昭和56)年2月12日付で廃車となります。
その後、同じく堅田町にあった名鉄マリーナホテル(平成11年3月閉鎖)に引き取られ、ナンバーも新たに滋賀22や200となり、利用客の送迎用として第2の人生をスタートさせます。実はこの時に赤・黒・白のトリコロールカラーに変更されています。「赤は『井伊の赤備え』をイメージしたもの」と仰る方もいらっしゃいますが、それは大きな誤り。これは名鉄カラーの赤なのです。
しかしここでの活躍は僅か7年。長浜商業開発協同組合により1988(昭和63)年に開設された商業施設・長浜楽市に於いて、長浜駅や市内観光地との循環バス・長浜楽らく観光バスとして着任。

湖西から琵琶湖を対角線上にぐるっと回って、湖北にやってきたのです。
この時現在のナンバー滋賀22き25となり、当時としては珍しく所有は長浜市、運行は近江鉄道という事業分離形態を採用。多くの観光客や買物客から親しまれ、長浜の観光振興に大きく寄与しました。
しかし、運命の悪戯か長浜楽市の商業施設としての陳腐化と周辺への大型商業施設の進出が仇となり、循環バスの運行は廃止。老朽化も相まって、いよいよこのボンネットバスの命運も尽きたかと思われました。
でも幸運の女神はまたもこのバスに微笑みかけたのです。車輌は近江鉄道に譲渡され、1997(平成9)年4月より彦根ご城下巡回バスとして再々々々スタート。ようやく安住の地を得たのです。

それまで観光客誘致での大きなネックであった彦根駅と彦根城周辺とのアクセスが格段に向上し、また昭和レトロ(というより高度成長期の雰囲気)な街並みともマッチして、その存在は市民や多くの観光客に愛されました。大きなトラブルもなく、観光シーズンと週末の定期運行を、老体に鞭打って見事に完遂。
さらに2007(平成19)年に開催された『国宝・彦根城築城400年祭』で登場したマスコットキャラクター・ひこにゃんの人気沸騰ぶりも手伝って、全国にその認知度を高めました。
2013(平成25)年6月にはひこにゃんラッピングが施され益々人気が高まってきていただけに、突然の引退は正に青天の霹靂。とはいえ、結局最初に納車された江若交通よりも長く彦根で活躍してくれたことには、感謝の念に堪えません。
老朽化と部品調達の困難、運転手の後継者不足が大きな理由とされてはいますが・・・小生の(個人的な)見解として、
(1)所属していた彦根営業所の整備工場が、大津営業所に移転。理由は立命館大学路線に導入した大型連接バスのメンテナンスを行うため。これにより彦根営業所ではオーバーホールを伴う大規模な整備が、設備・人員不足により困難となった。
(2)ボンネットバス運転手の高齢化と、慢性的なバス運転手不足。路線バスの運行を優先させるためには、観光用の古いバス1台の維持のために予算も教育の時間も割けない。
結局、昨今の事業会社の大規模な合理化の波の犠牲になったと考えるのが妥当でしょう(因みに同様の車輛を保有する奈良交通は、自社で部品を自作してでも動態維持するとのこと)。
近畿で唯一定期運行を維持してきたボンネットバスだけに、このまま滋賀の貴重な観光資源を見す見す消滅させてしまうのは地元として無策の極み。せめて動態保存し、時折イベント等でお披露目する状態には維持してもらいたいものです。
なお、この週末の10月28日(土)・29日(日)は彦根ご城下巡回バスでの最後のご奉公、つまりラストランになります。まだボンネットバスを体感しておられない方は、現段階で最後のチャンスとなりますので、是非彦根へお出掛けください。

あとボンネットバス唯一のオフィシャルグッズであるポストカードも残部僅少とのこと。
こちらもお急ぎください。詳しくはコチラの近江鉄道のグッズサイトをご覧ください(彦根観光協会の販売分は完売しました)。
久々の執筆、大変疲れました(+o+)
また時間と気分とネタに余裕が出て参りましたら再臨致します。相も変わらずの長文ダラダラにお付き合い頂きまして誠に有難う存じました<(_ _)>
【資料提供】昭和有閑倶楽部 乗合自動車分科会
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