「後藤奇壹の湖國浪漫風土記」に、ようこそおいでくださいました<(_ _)>
滋賀・犬上地区に点在する限界集落の魅力を12週連続でご紹介するシリーズ。第10回は前回ご紹介致しました桃原集落に纏わる、ある文豪のエピソードについてご案内致します。
その文豪とは大佛次郎(おさらぎ・じろう)のこと。大正・昭和期に活躍した小説家です。
新聞小説・時代小説・現代小説・戯曲・ノンフィクション・童話などその類稀なる才能を余すところなく発揮。特に『鞍馬天狗』『赤穂浪士』『パリ燃ゆ』『天皇の世紀』などといった歴史小説は秀逸で、現在でも彼の作品には熱烈なファンが存在します。
その大佛次郎が折りに触れ執筆し、深い教養と批判精神に裏打ちされた彼の闊々とした人格の魅力を最もよく表現している随筆&歴史紀行集『大佛次郎随筆集』の「今日の雪」のくだりに、この桃原が登場するのです。
1967(昭和42)年。新幹線に乗車していた彼は、ほんの気まぐれで米原駅を降り立ち、おもむろに多賀大社へと足を運びます。
その際利用したタクシーの運転手から『山奥の寒村』の話を耳にし、興味を持った彼はこの桃原を訪れます。
風光明媚な故郷・横浜の暮らしに慣れた彼にとって山奥の寒村は『桃源郷』のような幻想を抱いていたのですが、その現実とのギャップに大きなショックを受けます。
しかしある老婆との出逢いが、彼に様々な場所でのそれぞれの人生というものの持つ重みを痛切に感じさせたのです。
そんな大佛次郎の足跡をたどり、ここでの彼の心情に思いを馳せながら訪ねてみるのもまた一興ではないでしょうか。ちなみにこの記念碑は集落の入口にひっそりと佇んでいます。
次回もお愉しみに(^^)
【参考文献】 角川日本地名大辞典・25滋賀県(角川書店)
【取材協力】 MT TRADING
ご愛読いただき誠に有難うございます。ワンクリック応援にご協力をお願いいたします!