帝を魅了した奇跡の霊果“ムベ”の伝説

「後藤奇壹の湖國浪漫風土記」に、ようこそおいでくださいました<(_ _)>

 

今回は帝を魅了した奇跡の霊果、ムベについてのお話をいたしたいと存じます。

 

えっ?“ベム”ではございません。妖怪人間ネタではありませんのでご注意を(^^)

 

 “ムベ”とは植物の名前です。

 

別名「トキワアケビ(常盤通草)」とも呼ばれ、その他「ウベアケビ」「ムベアケビ」「本アケビ」「カラスアケビ」などとも呼ばれます。

 

「エビカヅラ」との別称もありますが、これは全く異なる植物です。

 

かいつまんで申しますと「アケビ」の仲間です。“アケビ”と言われましても現代っ子には馴染みがほとんど無いと思いますが、ご年配の方々にはその名を聞いて懐かしさが込み上げてくるのではないでしょうか。

 

植生は蔦(つた)のように他の木に絡まって上に伸びます。5月頃に白色または淡紅色の花が咲き、10月後半から11月初旬頃に果実が実ります。実は長さ8cm程度の楕円形で、熟すると紫色になり、内部には乳白色の粘りのある甘い果肉と黒い種子があります。

 

その果実にムベという名が付いた由来ですが、今から約1340年前のお話になります。

 

都が大津に遷された頃のこと。ある日、時の帝・天智天皇(てんじてんのう)は蒲生野で遊猟していた際、奥島(現在の近江八幡市島町・北津田町付近)に立ち寄ります。

 

そこで珍しく長寿で男の子を8人も育てた老夫婦に出逢います。天皇がその老夫婦に「おまえたちの長生きの秘訣は何か?」と尋ねますと、老夫婦は「此処にはこのような珍しい果物があるのです」と天皇にその実を差し出したのです。

 

すると天皇はその実を見て、「むべなるかな(如何にももっともなことであるな)。このような霊力のある果物は毎年朝廷へ献上するように」と命じたそうです。

 

以後この果実は“ムベ”と呼ばれ、この地域では毎年11月に朝廷へ献上するようになり、その代りに朝廷や幕府からの賦役(ふえき/農民が領主から課せられた労働と地代)を免除されたり、献上道中帯刀の恩典(ムベを献上する道中に限り貴族や武士でなくとも一行は刀を携帯してもよい特権)を受けたりしたそうです。

 

しかしこの特権に危機が訪れたこともありました。室町時代末期、幕府や地頭が財政に困り新税を課そうとしたのです。

 

しかし奥島では、ムベの供御人(くごにん/朝廷に属し天皇や皇族に山海の特産物といった飲食物や各種手工芸品などを貢納した人々のこと)が免除の前例を願い出たので許されたそうです。

 

その後“応仁の乱”で世情が混乱し、一旦献上が中絶されてしまいますが、江戸時代に入り前例に倣って再開されました。献上行列の「ムベ御用」には、十六八重表菊(菊の御紋)の役符、御紋入り提灯まで下付され、特別待遇されたそうです。

 

1878(明治11)年に明治天皇が北陸に巡幸された折、当時の滋賀縣令(けんれい/現在の知事)・籠手田安定(こてだやすさだ)がムベを献上し、

 

大君に ささけしむべは 古き代のためしをしたふ

民のまこころ

 

という歌を詠んでおり、現在大嶋奥津嶋神社の境内にその歌碑が建立されています。

 

ムベの献上は1982(昭和57)年まで続けられましたが、伝説の老夫婦の縁戚と呼ばれ代々供御人を務めた家が引っ越してしまったため途絶してしまいます。

 

しかし大嶋奥津嶋神社の宮司・深井武臣氏を中心とした有志の方々の尽力により、2002(平成16)年より再開されました。

 

ちなみにムベ献上のルーツともなった天智天皇を祭神として祀る近江神宮(大津市)にも、1940(昭和15)年の創祀以来、毎年献上されています。

 

以前はこの地域一帯に沢山のムベが生い茂っていたそうです。一時期天然記念物にも指定され、近江八幡国民休暇村を通る旧湖周道路沿いに「ムベの碑」が設置されていましたが、現在は撤去され存在しません。

 

近江八幡運動公園近くの津田内湖干拓地には町おこしの一環として「ムベ棚農園」が造成されています。

 

毎年この時期になると“ムベ狩り”が行われます。私も皆さんに“栽培物のムベ”をご覧いただこうと現地に赴いたのですが、今年は猛暑の影響かまだ実施されていないようです。

 

たまたま北津田町内を通っていましたら「むべに親しむ郷づくり」運動で、1995(平成7)年より始められた露地栽培のムベ棚を見つけましたので写真に収めてきました。地元ではムベを使ったお酒やお菓子も作られていますので、興味のある方は是非訪れてみてください。

 

なお、むべ狩りは事前予約制になっておりますので、詳しくは下記リンクの情報でご確認ください。

津田内湖畑作営農組合“むべ狩り”

 

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