薙ぎ払えっ!“守山の火祭り”の伝説

「後藤奇壹の湖國浪漫風土記」に、ようこそおいでくださいました<(_ _)>

 

 

今回は滋賀随一の“炎のページェント”、守山の火祭りについてのお話をいたしたいと存じます。

 

 

JR琵琶湖線・守山駅西口から西方に約800m。

 

 

小さくこんもりとした森の中に、勝部(かつべ)神社があります。

 

 

大化5(649)年。

 

 

この一帯を治めていた物部宿禰広国(もののべのすくねひろくに)が物部郷勝部村のこの地に祖神を祀り、この地の総社(そうじゃ/特定地域内の神社の祭神を集合させて祀った神社)として物部大明神と称したのが起源とされています。

 

 

その名が指し示す通り、こちらには武神が祀られており、また「勝部」とは武門の吉相を意味するため、古くから武家の厚い崇敬を受けておりました。そのエピソードには枚挙に暇がありません。

 

 

近江源氏で守護職にあった佐々木氏は、出陣の際に必ず参拝して戦勝を祈願した。

佐々木(六角)高頼は社殿を再興(現存する社殿)し、また(応仁の乱に)出陣の際は境内の竹を切り出して旗竿にした。

元亀元(1570)年に織田信長が野洲・栗太両郡を制圧し、領主に服従の起誓文を書かせ、集まった六十余通を奉納。また戦勝の祈願文も奉納した。

文禄元(1592)年に豊臣秀吉が、朝鮮征伐(文禄の役)の戦勝を祈願する。

八幡山城主の豊臣秀次が神領を寄進する。

 

 

これだけの名だたる武家・武将から頼りにされていた、実はスゴい神社なのです。

 

 

さて話題は変わりまして、この勝部神社では毎年1月の第2土曜日(2005年までは1月8日)に勝部の火祭りが行われます。

 

 

当日朝5時に採取された菜種殻で作られた大蛇形の頭に、ハンノキ・青竹(かつては柴)の割木を荒縄で縛った胴体を付け、長さ5~6m・最大直径約40cm・重さ約400kgもの大松明16基を仕立て、昼過ぎに全ての松明に対して神酒・鰯・豆腐を供え祈祷を行います。

 

 

3基の大太鼓が街中を練り歩いた後、午後8時頃に全ての松明に奉火。神前にて約100~200人もの裸体に褌姿の若者達が「ごうよ」「ひょうよ」(御脳平癒の転)と大きな掛け声をかけながら乱舞し、御神火をもって無病息災・五穀豊穣を祈願します。

 

 

そもそもこのような“ダイナミックな奇祭”が行われるようになったのは何故でしょうか?

 

 

一般に伝えられているのは、今から遡ること約800年前の鎌倉時代初期。

 

 

時の帝であった土御門(つちみかど)天皇が重病に掛かり、一向に回復の兆しが見えませんでした。これを憂慮した朝廷は、占師に占わせて原因を追究させました。

 

 

占師は、「近江の国、栗太・野洲両郡の境に大沼(現在の野洲川を指す)があり、ここに齢数千年の大蛇が住んでいる。それが天皇に危害を加えている。このままでは御命を奪うであろう」と申しました。

 

 

早速朝廷から討伐隊が派遣されますが、大蛇はなかなか姿を見せません。討手は仕方なく勝部神社に参籠し、50日間の祈願を行います。

 

 

そして満願の日。

 

 

何と何処からともなく疲労困憊した大蛇が這い出てきたではありませんか。討手はここぞとばかりに大蛇を焼き殺します。するとたちどころに天皇の病状は回復しました。これを起源として火祭りが行われるようになったとされています。

 

 

もう1つ、言い伝えが残っています。

 

 

今から遡ること約1950年前の飛鳥時代中期。

 

 

物部宿禰広国が野洲郡を通って物部大明神(勝部神社)に向かおうとした際、湛度の淵(たんどのふち/現在の野洲川を指す)に大蛇が現れました。

 

 

広国は太刀を振り回し、たちどころに大蛇を3つに切り捨てました。

 

 

その時大蛇の胴体は湛度の淵に残り、頭部は浮気(ふけ/現在の守山市浮気町付近)に落ち、尾は窪江(くぼえ/現在の大津市瀬田大江町)へと飛んで行ったそうです。

 

 

“勝部の火まつり”で使う松明はその胴体部分にあたり、注連縄(しめなわ)は大蛇の鱗(うろこ)を表しているともいわれています。

 

 

なお頭部が落ちたという浮気にある住吉(すみよし)神社でも、この故事に則り住吉の火まつりが勝部の火祭りと同じ日時に催されます。

 

 

こちらは6基の松明を用い、年寄衆の弓射式で祭りが始められるなど、より古式に従った神事で行われます。掛け声は「へーよ、へーよ」と勝部神社とは若干異なります。

 

 

この2つの火祭りを総じて「守山の火祭り」と呼び、何れも昭和33(1958)年に滋賀県の“記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財”に選択されています。

 

 

これらの祭礼はJR守山駅を基点として、ほぼ東西の同心円上で、しかも同じ日のほぼ同時刻に神事が始まり、そしてクライマックスを迎えます。

 

 

2つ同時に観覧することは「ドラえもんのどこでもドア」でも持っていない限り不可能ですので、是非2年に渡ってご堪能ください(^^)

 

 

今年は来る1月14日(土)に執り行われます。強烈な御神火のパワーを受けて、このモヤモヤした閉塞感を薙ぎ払いましょう!

 

 

勝部神社

・滋賀県守山市勝部1丁目8-8
・JR守山駅西口より徒歩10分

住吉神社

・滋賀県守山市浮気町152
・JR守山駅東口より徒歩15分

※両神社とも駐車場がございません。公共交通機関もしくは守山駅前の各有料駐車場をご利用ください。

 

 

今回の記事編集に写真をご提供いただきました滋賀県庁広報課様。この場を借りまして厚く御礼申し上げます。

 

 

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