「後藤奇壹の湖國浪漫風土記」に、ようこそおいでくださいました<(_ _)>
システムエラーにより更新が少し遅くなりました(>_<)
お正月は楽しくお過ごしになられましたか?今日からお仕事スタートの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さて「後藤奇壹のびわこ浪漫怪廊」も本日から本格復帰でございます。
その第1弾が“けいおん”と“メンソレータム”…「ナゼにその選択?」とのご指摘、ごもっともでございます(^^)
実は前ブログでのアクセスランキング断トツ1位の記事でございまして…外すワケには参らぬと思い、復帰1号記事に抜擢いたしました。
“けいおん”とは、これまでTVで2シーズン放送された後その人気は止まるところを知らず、ついに劇場版が昨年12月3日に公開された「萌え系アニメ」の金字塔的存在(褒め過ぎか?)。
単なる「萌え系」に止まらず、音楽には素人同然の女子高生が廃部寸前の「軽音楽部」を再興するという意外にもしっかりした設定。
それでいて内容のほとんどがポヤ~ンとした彼女たちの日常を描いている点がファンの共感を呼び、また実際の街並みや建物を登場させるなどして地域の活性化にも貢献しているという点でとても高い評価を得ているユニークな作品…と聞いております(^^)
“メンソレータム”といえば、お馴染み「ロート製薬」が販売している、ちょっぴりスースーする「リトルナースちゃん」が目印のスキンケア商品。今ではリップクリームの知名度の方が高いのかも知れません。
“けいおん”と“メンソレータム”…「女子高生つながりかっ!」などと、そんな“安直なコラボ”はいたしません。これらには別にある深~い共通点が潜んでいるのです。
皆さん、「豊郷町立豊郷小学校」をご存知でしょうか?普段から時事ニュースを注視されている方ならご記憶かとは存じますが、1999(平成11)年にいつも全国紙の三面記事とは縁遠い滋賀県が一躍有名になってしまった事件がございました。
そう、当時の町長と町民が真正面から対立した「校舎改築問題」です。
豊郷小学校の校舎は去る高名なアメリカの建築家が手掛けた、とても格式ある建造物なのです。
そして(もうご存知の方は多いかと思いますが) “けいおん”に登場する女子高生たちの日常生活の舞台となっている学校は、この校舎をモチーフにしているとされています。
ここで事件の経緯を改めて紹介いたしませんが、もしこの校舎が解体されていたら、“けいおん”の中で登場する校舎はおろか、階段の手すりにあしらわれたウサギやカメのオブジェも描かれることはなかったでしょう。
アニメでは校舎の魅力の全てを網羅しているワケではありませんが、建築家の子どもたちへの深い愛情が随所に感じられる建物なのです。
今では事件のことなど無かったかのような様子で、週末ともなると地元商工会主催の「けいおん!カフェ」が人気を博しているようです…私は行ったことないですが…(^^)
おまけに劇場版公開を契機に、京阪電車・石山坂本線では左のようなラッピング電車も運行しています(これはかなり“痛い”…)。
さて次に“メンソレータム”ですが、もともとはアメリカの「メンソレータム社」という会社の製品だったというのはご存知でしょうか?
大正時代にあるアメリカ人が創業した「近江セールス(現在の近江兄弟社)」が日本でのライセンス(製造・販売)権を獲得し、国内に広めたのです。ただ残念なことに1974(昭和49)に近江兄弟社が経営破綻(後に再建)したため、その権利を返上してしまったのです。その後ロート製薬が権利を取得、1988(昭和63)年にメンソレータム社を買収し現在に至ります。あの「リトルナース」のキャラクターデザインも、もともとは近江兄弟社が手掛けたものなのです。
もう勘の良い方はお気付きかと思いますが、 “けいおん”と“メンソレータム”の共通点にはあるアメリカ人がいるのです。
そのアメリカ人というのが、今回のエピソードの中心人物「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ」その人なのです(いつも“前振り”が長くて申し訳ありません<(_ _)>)。
ヴォーリズは1905(明治38)年に、滋賀県立商業学校(現在の滋賀県立八幡商業高等学校)の英語科教師として来日します。その後京都で建築事務所を設立し、日本各地の学校や教会などの建築に携わりました。
1908(明治41)年以降は近江八幡を拠点とし、数々の事業を展開していきます。周囲は彼のことを「青い目の近江商人」と呼んだそうです。後に子爵の令嬢「一柳満喜子」と結婚、日本に帰化して「一柳米来留(ひとつやなぎめれる)」と改名します。
ちなみに“米来留”という漢字表記は、「アメリカから来て留まる」という意味を洒落でつけたそうです。
改名してまもなく太平洋戦争が勃発。彼にとって「二つの故郷」が戦争状態に陥ったことは、さぞかし辛いことだったでしょう。戦後ヴォーリズは連合軍総司令官「ダグラス・マッカーサー」と太平洋戦争直前の内閣総理大臣だった「近衛文麿(このえふみまろ)」との仲介に尽力しました。天皇家の護持が成し得られたのも、彼の功績が大きいとも言われています。
そんな「深~い歴史」があったのも知らずして、私たちは今を生きているんですよねぇ。なお豊郷小学校の他に、事業の拠点であった近江八幡市には現在でも「ヴォーリズ建築」が多数保存されていますので、是非散策してみてください。
あと最後に豆知識。再建した近江兄弟社はメンソレータムに関する全ての権利を失ってしまったため、後に「メンターム」という商品を世に送り出します。
メンソレータムとよ~く似ているのですが、決定的に異なる点が2つあります。
1つめ。
メンソレータムのキャラクターは「リトルナース」ですが、メンタームは「メンタームキッド」、つまり“男の子”に変わっています。
なんとな~くタッチが似ているのは、同じデザイナー(今竹七郎)によるものだからです。
2つめ。
中身の薬の色ですが、メンソレータムは「淡い黄色」でメンタームは「白色」です。これは主成分であるワセリンの種類が異なるためです。
実際に薬局でl両方お買い求めになって違いを比べてみるのも面白いですよ。ちなみに両者とも効能は“同じ”ですのでご心配なく(笑)。
「映画けいおん」はただいま絶賛好評超絶公開中で~す。
決して「宣伝」ぢゃないッス!(爆)
(※この記事は「滋賀サクの歴史浪漫奇行」にて2010年7月21日に掲載したものを加筆修正しております。)
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